お花のピアスが完成です

ゴールのご褒美にピアスを新調。

「目標タイムを達成したらピアスを新調する」

そう話す女性に出会ったのは、たまに行く地元の鍼灸院でした。第一線で活躍するアスリートも多く来店するこの鍼灸院、訪れる人の大部分は趣味というレベルを超えた素晴らしい成績を誇る人たちです。

私が訪れた時に、たまたま待合室で一緒になった女性と話をするうちに彼女が話してくれたのが冒頭の「目標タイムを達成したらピアスを新調する」事でした。

マラソンレースに参加している彼女に聞くと、日本のトップクラスとも戦えるのでは無いかと思うくらい早いベストタイムを記録していました。

鍼灸院に来ていたのはレース後の体のメンテナンスのためでした。マラソンで目標タイムを達成したばかりだったのでした。

話しているうちにお互いの職業の話になり、それならピアスを作ってくださいとご依頼いただいたのです。

 

走る時邪魔にならないデザイン

彼女は、レースの時はジュエリーは一切付けないけれど、普段の練習ではピアスは付けて走るそうです。

ピアスをしていると目標達成した実感が湧いてくる。そして、また前進する勇気が出てくると話す顔はとても良い笑顔でした。

彼女のリクエストは

シンプルなのが好きなんです。それでいてどこかにアクセントがあって他のピアスと違う感じ。緑色の宝石のピアスを持っていないから薄い緑色の石がイイかなと思っています。水色やピンクみたいに薄い色でもいいかな。

というものでした。

薄い緑色、水色、ピンクなどの薄い色の宝石。シンプルでありながらどこかにアクセントのある個性、それと大事なのが、マラソンの練習の時に身につけるので邪魔にならないデザインである事です。

 

アイデアスケッチ

緑、水色、ピンクなどの淡い色の宝石と言えば、

ペリドット、トルマリン、アクアマリン、ブルートパーズ、モルガナイト、ピンクサファイアなど色々あります。その中からベストな宝石を選びます。

 

そして「シンプルながら、他のピアスとは違う個性」をどんな風に出すか考えました。

今回のピアスは小さいものなので細かい細工を入れるのは難しい。

身につけた時に、ぱっと見た第1印象で’あれっ?ちょっとかわってる’と感じられる、隠し味の様な個性がちょうど良いのではと思いました。

小さいピアスに個性を出すという事で考えついたのが、石を留める貴金属の部分をあえてラフな形にして、手作り感を出すデザインです。

実際にジュエリーを手作りで1点づつ作っているので’手作り感を出す’という表現はちょっとおかしいのですが、わかりやすく言えば、とろけるチーズの角がすこ〜し溶け出した瞬間のあの’とろっ’とした感じです。貴金属の部分に丸みを出して、見た瞬間にそのとろっと感が個性に感じられる様に作る事にしました。

 

一番最初は2種類のデザインを提案させて頂きました。

一つは全体が半球状の形をしたデザインで

もう一つは花の形をしたものです。

宝石も色違いで何種類かご提案しました。

あえてとろっと感を出す事も彼女は面白がってくれました。

 

最終的に彼女が選ばれたのは花の形のデザインでした。

ピアスのラフスケッチ
ピアスのラフスケッチ

 

花と雫に見えるデザインで、全体的にとろっとした柔らかい印象です。

石はペリドットです。

 

制作はワックスで

とろっと感をどう出すか?が大事なので、

原型はワックスで作る事にしました。

ワックスとはその名の通りロウで出来ているので火を使って少し溶かし、角を丸くする事が出来るのです。

けれど、そうは言っても小さいピアスの原型で、宝石一つ一つの大きさは直径2ミリほどですから、すぐに熱が伝わり過ぎて溶けすぎてしまいます。ちょど良い加減に溶けるように熱を調整するのが難しかったです。

ワックスが完成したらキャストという方法で貴金属にして、その後、石を留めるための細工をします。

お花のピアス。とろっと感を出しました。
お花のピアス。とろっと感を出しました。

そしてペリドットを留めたら完成です。

雫のとろっと感がうまく出たでしょうか?

 

新しい目標に向かう彼女を応援するラッキーピアス

完成して納品のため彼女にお会いしました。

新しい目標に向かって走る彼女のラッキーピアスになりますよう、心を込めて作りました。果たして気に入ってくれるでしょうか?

某マラソンレースに招待選手としてエントリーしたのでまたそれに向けて練習すると笑顔で話す彼女はとてもエネルギッシュでした。

ピアスを見て、とても可愛い!と喜んで頂けました。

お花のピアスが完成です
お花のピアスが完成です

お客様の笑顔を見られるこの瞬間が私はとっても好きなのです。

 

このピアスを付けて、彼女は今日もどこかを走っているのかしらと時々思い出します。彼女の新たな目標達成を心から祈っています。

 

お花のピアスが完成です
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アートトリップマガジン 「風のかをり」

あえて知らない場所へ行き、まだ見たことのないその地から受ける刺激は新たな創造の種となってくれます。 その土地の気候、動植物、住む人たち、食べ物といったその場所の全てが作り出す空気感を私は「かをり」と呼んでいます。 たとえ徒歩で行ける場所でも、そこから何か刺激を受け取ったらそれは旅です。 距離の長短ではなく、日常とは違う、自分の人生をより良くしてくれる刺激を与えてくれる場所に行くことを私は旅と呼んで、そこから感じたかをりをお届けします。