エメラルドの産地別インクルージョンの特徴。天然石のあばたもえくぼ。

コロンビア産エメラルド

天国の庭が見える石

「天国の庭が見える石」とはどの宝石を言うかご存知ですか?

いきなり答えですが、エメラルドの事を言います。

エメラルドの有名な産出地であるコロンビアは、かつてスペイン軍の侵略によって植民地化されていました。1537年にエメラルド鉱山が発見され、採掘されたエメラルドは当時のインド、トルコ、ギリシャに運ばれて高値で売られていました。緑色の美しい天然のエメラルドは、光にかざして見るとインクルージョンが木や草の茂った庭の様に見える事から「天国の庭が見える石」と言われていたのです。

このように昔から人々を魅了してやまないエメラルドはインクルージョンの多い宝石として知られています。その理由は、エメラルドが出来る工程にあります。他のベリルが地表近くで結晶するのに対して、エメラルドは地下深くで大きな圧力を受けて結晶します。その過程で液体、気体、固体のインクルージョンが内包されるのです。

インクルージョンは宝石の「傷」とみなされる事が多いのですが、エメラルドが結晶する過程で出来たインクルージョンはその宝石の出生証明書ともいうべき情報が入っていて言わば天然宝石の証の様なもの。それを加工後に出来た割れや欠けと同じく傷として扱うのはナンセンスです。実際エメラルドはオイルや樹脂を含浸させるエンハンスメントが広く行われており、それは宝石の本来の美しさを引き出す方法として一般に認知されています。

エメラルドはインクルージョンがあって当たり前の宝石なのです。

産地別インクルージョンの特徴

エメラルドは産出地によって特徴が異なります。比重や屈折率の微妙な違いから鑑別では精密測定によってその産地がわかりますし、インクルージョンの特徴も産地確定の材料になります。

インクルージョンに現れる特徴をみてみましょう。

コロンビア産エメラルド
画像出典:wikipedia

コロンビア産エメラルド

三相インクルージョン

ギザギザした空洞部に液体(食塩水)が満たされ、さらにその中に固体(岩塩)と気体を内包する三相インクルージョンはコロンビア産のエメラルドのみに見られる特徴です。その他の産地は液体の中に気体を内包する二相インクルージョンが見られます。

他の特徴

三相インクルージョン以外には、パイライト(黄鉄鉱)のインクルージョン、カルサイト(方解石)のインクルージョンが含む特徴があり、黒色のインクルージョンは他産地のものは黒雲母によりますが、コロンビア産はクロマイト(クロム鉄鋼)によるインクルージョンです。

ウラル産エメラルド

ウラル産エメラルドの特徴は、笹の葉状に見えるアクチノーライト(陽起石)の結晶インクルージョンです。

インド産エメラルド

インド産の特徴は直交する二相インクルージョンと、コンマ(,)状のインクルージョンです。

トランスバール産

トランスバール産のエメラルドは羽毛状(フェザー)とスノーフレーク状に見えるインクルージョンが特徴です。

エメラルドの出生証明書

鮮やかな緑色をエメラルドグリーンと呼ぶように、エメラルドの緑色は最も美しい緑色の代名詞として使われます。その事からも、その色がエメラルドの最大の魅力である事は間違いありません。しかし、冒頭のように天国の庭と呼ばれて陽の光にかざして愛でられたインクルージョンもまたエメラルドの魅力の一つで間違いありません。

もし鼻が低かったら世界は変わっていただろうと言われたクレオパトラも、エメラルドを愛してやまなかった一人です。そのエメラルドのインクルージョンがもしなかったら、同様に世界が変わっていて、愛される宝石が地上から一つ減っていたのではないでしょうか。

エメラルドはインクルージョンがあるからこそ、その神秘的魅力を放ち続け、これからも多くの人を魅了し続けるのでしょう。

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