赤いエメラルドはあるのか?レッドエメラルドと呼ばれる宝石について

レッドベリル

鑑別書で使われる正式な名前と商目的で付けられたコマーシャルネームの二つ以上の名前を持つ宝石は少なくありません。

通常宝石名は”色+鉱物名”で名前が付けられ、あわせて独自の名前を持つ宝石も多いです。ピンクベリル(モルガナイト)、イエローベリル(ヘリオドール)などが良い例です。これらは宝石の名前として認められているものです。宝石にはこれとは別に、コマーシャルネームと呼ばれる正式名称とは違う商取取引用の名前が付けられる事があります。レッドエメラルドと言うものがその例です。

このレッドエメラルド、一見”色+鉱物名”で正式な名前っぽく感じますが、そもそもエメラルドの名は酸化クロムが発色要因で緑色をしているグリーンベリルに付けられる名前です。ですからレッドエメラルドという名はそもそも矛盾していて、赤いベリルはレッドベリルと呼ばれるべきです。

コマーシャルネームとは

宝石のコマーシャルネームとは、宝石に学名や正式名称ではなく、商用目的で付けられた名前を言います。コマーシャルネームが付けられる宝石は、より価値が高い宝石の名前と類似するように付けられる事が多いです。

ペリドットのうち緑色の濃いものが”イブニングエメラルド”というコマーシャルネームで呼ばれているのが一つの例です。

ところが、このレッドエメラルドと呼ばれる宝石、エメラルドと比べて決して価値が低いとは言えない希少性の高い宝石なのです。

レッドエメラルドとはなんなのか

レッドエメラルドはレッドベリルのコマーシャルネームです。レッドベリルはベリルグループの中でも希少な宝石のため、同じく希少なベリルであるエメラルドの名前をつけて、価値を訴求しやすいようにと付けられた名前のようです。

レッドベリルにはまた、ビクスバイトという名前がありました。これはレッドエメラルドのようなコマーシャルネームではなく、正式な名前でしたが、今ではビクスバイトとは呼ばれていません。

それはなぜでしょうか。

レッドベリルは1904年にアメリカ、ユタ州の鉱山でメイナード・ビックスビー(Maynard Bixby)の手によって発見されました。その2年後にアルフレッド・エプラー(Alfred Eppler)によってビクスバイト(bixbite)と名付けられました。このビクスバイトの名はエメラルドと同じく正式に認められた名前でしたが、同じくメイナード・ビックスビー(Maynard Bixby)によって名付けられた他の鉱物”ビクスバイト(Bixbyite)”と混同されてしまう可能性があるためCIBJO(国際ジュエリー連合)とIMA(国際鉱物学会)から名前を廃止されたのです。これ以降、ビクスバイトではなくレッドベリルが正式名称になったのです。

Bixbyiteビクスバイトってなに?

同じ人物が付けたとはいえ、bixbiteとbixbyiteと、Y一文字しか違わない似た名前を持つ違う鉱物が存在してしまうとはなんとも面白い(といったら不謹慎でしょうか)事です。

ビクスバイトの名前を勝ち取り、赤く美しいこの宝石に名前を変えさせてbixbyite/ビクスバイト(書いていてもヤヤコシイ。。。)とはどのような鉱物なのでしょう。

ビクスバイトは、等軸晶系結晶の酸化鉱物で、6.0〜6.5のモース硬度を有します。メタリック光沢を持ち色は黒。綺麗に立方体、八面体、十二面体に結晶するのでコレクターに人気の鉱物です。

ビクスバイト
ビクスバイト(Photo:Wikipedia)

上記写真のように黒光りする外見はクールで男性的。レッドベリルの華やかさとは全く違います。どうしたって間違うはずがない二つの鉱物ですが、ほとんど同じ名前では紛らわしいのは確かです。ビクスバイトの名は、このクールな黒い鉱物に譲って赤いベリルは素直にレッドベリルと名乗る事になりました。

ほかにもある。紛らわしい鉱物

レッドベリルと紛らわしい鉱物はビクスバイトだけではありません。
レッドベリル、ビクスバイトとして販売されている赤い宝石の一部は、実はペッゾタイトの場合があります。ペッゾタイトは2003年にIMAに認定された新しい鉱物で、まだ沢山産出されていませんが、レッドベリルほど貴重ではありません。そのため、レッドベリルを手に入れる場合、宝石鑑別書をつけてもらったほうが賢明です。

ペッゾタイト
ペッゾタイト(Photo:Wikipedia)

レッドベリルはなぜ希少なのか?

レッドベリルはエメラルド同様に希少な宝石と書きましたが、その理由をお話しします。

レッドベリルはアメリカのユタ州ワーワー鉱山ほか数箇所でしか産出されません。1998年に、ユタ州のGemstone Mining Incという会社がルビー・バイオレット・クレイム鉱山を1000万ドルで買収しました。レッドベリルの年間産出量は年間約5,000〜7,000カラットしかなく、世界で最も希少な宝石の1つでもあります。最高品質の価格は1カラットにつき10,000ドルと高価です。しかも大きい結晶は取れず、いままで見つかったレッドベリルの最大結晶は、幅が約2センチ、長さが5センチで、ほとんどのレッドベリル原石は1カラット以下です。ですから2〜3カラットの石は非常に大きいと考えられます。
ここからカットされて宝石となるレッドベリルの大きさは自ずと限界があり、ほとんどは0.2カラット以下です。1カラット以上ある宝石レベルのレッドベリルは非常にまれでとても高値で取引されています。

その上、レッドベリルが結晶するための条件は
1、結晶するために十分なベリリウムが存在する事
2、1とともに赤い色をつけるマンガンが同時に存在している事
3、ベリリウム、マンガン、アルミニウム、シリコン、および酸素が結晶するような地殻の条件が揃う事
の3つの条件が揃わなければいけません。

この事からわかるのは、レッドベリルはエメラルドよりもはるかに希少な宝石と言えるかもしれないと言う事です。

レッドベリル
レッドベリルの結晶。なんて美しいのでしょうか。(Photo:Wikipedia)

 

このように、レッドエメラルドなんてコマーシャルネームを付けられたり、名前が似ていたために変更させられたり、新たにそっくりさんが出現したりと、その名前についてなかなか落ち着かないレッドベリル。けれど、ほかの鉱物と比べても負けない美しさと希少性を兼ね備えたレッドベリルはエメラルドよりももっと希少価値のある宝石と言って間違いありません。
もし、美しいレッドベリルに出会ったのなら、手に入れて損はないと思います。

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